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保育者人生の分岐点②
【相談する? しない?】

2023.04.03

人それぞれに訪れる、保育者としての人生の分岐点。
「もう辞めようかな」という迷いに、当事者、同僚、園長、養成校講師……と、いろいろな立場を経験してきた大澤洋美先生が答えます。

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相談する、しないの分岐点

 新年度、園に就職した大学の教え子たちから、頻繁に連絡が届きます。そのほとんどは、相談事。「先生、もう無理〜!」と言ってやって来るのですが、その内容はといえば、「○○の活動案の△△の部分をどうしたらいいか」といった、すごく細かい内容だったりします。
 そのくらい自分で考えなさいと言いたくもなりますが、「でも、新人の頃って……」と共感もします。自分の若い頃を思い返しても、何もかもできなくて、いちいち壁にぶつかって「もうだめだ」と思っていました。
 また、こうしていちいち弱音を吐きにくる子は、わりと安心でもあります。なんだかんだと騒ぎつつも、壁を一つ一つ乗り越えていくのです。そして、やがては大学時代の先生よりももっと頼れる身近な相談相手を見つけて、連絡が少なくなっていきます。
 心配なのは、一人で抱えてしまう子です。あれこれ抱え込み、気がついたら辛くなりすぎて、辞めてしまった教え子がいます。新人に限った話ではありません。園長職の頃には、あんなに頑張っていたのに……という中堅の先生が辞めていったこともありました。その先生が抱えているものは、全く見えませんでした。もっと話を聞くことができたのではないか、結果は変わらなかったかもしれないけれど、もっと聞こうとすればよかったと、後悔が残っています。
 周りの人に相談するときのハードルには、個人差があります。ハードルの高い人にこそ、「話を聞くよ」というメッセージを伝えたい。自分自身も相談できる相手を常にもちたい。保育者人生の分岐点には、相談する相手がいてほしいと思うのです。

お話:大澤洋美

東京成徳短期大学教授

約30年にわたり東京都で保育に従事。幼稚園・こども園の園長を経て現職。『保護者の質問 こたえ方BOOK』『3・4・5歳児の心Q&A』(Gakken)ほか著書多数。

イラスト:北野有

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