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保育者人生の分岐点④
【続ける? 続けない?】

2023.06.02

人それぞれに訪れる、保育者としての人生の分岐点。
「もう辞めようかな」という迷いに、当事者、同僚、園長、養成校講師……と、いろいろな立場を経験してきた大澤洋美先生が答えます。

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続ける、続けないの分岐点

 前回、実習に行った学生が通る分岐点についてふれました。園に就職した後も、なんにもできない自分と、できている(ように見える)先輩たちとのギャップに悩みますが、周囲に支えられ、一つ一つ壁を乗り越え、できることを増やしていくうちに、だいたい3年くらいで、およそのことに対処できるようになっていきます。目の前のことに必死だった状態から抜けて、「できるようになってきたな」と、自分でも成長を感じられます。
 しかしながらここで、いわゆる「3年目の壁」が出現。保育を「続けない」選択をする人も少なくありません。
 保育にゆとりが出て、周りが見えてくると、徐々に、自分が登っている山の全貌も見えてきてしまうのです……。自分が「だいぶ登った!」と思った現在の地点は、まだまだ山の裾野。この先は急斜面、次の目的地も見えず……。「これ以上は無理!」と、美しく見える下界に向かって、パラシュートで降下していくのでしょう。
 業界全体として、キャリアの連続性が見えにくいという課題はあります。なだらかに登れる散策路を整備する変革も必要だと思います。現在、保育現場に残っている人たちの多くは、この山を上る決意をし、自力で崖を登ってきた猛者たち。それと同じことを求めないという周囲の意識も大事です。
 あとはやはり、園の中で自分が役立っていることを感じながら、保育のおもしろさ、保育の醍醐味をたくさん味わうこと。そして、そのおもしろさを語り合うことが、「速攻パラシュート」を避け、分岐点でじっくり悩む時間を生むのではないかと思います。

お話:大澤洋美

東京成徳短期大学教授

約30年にわたり東京都で保育に従事。幼稚園・こども園の園長を経て現職。『保護者の質問 こたえ方BOOK』『3・4・5歳児の心Q&A』(Gakken)ほか著書多数。

イラスト:北野有

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