保育者人生の分岐点⑧
【キャリアは消える? 残る?】
2023.10.02
人それぞれに訪れる、保育者としての人生の分岐点。
「もう辞めようかな」という迷いに、当事者、同僚、園長、養成校講師……と、いろいろな立場を経験してきた大澤洋美先生が答えます。
キャリアは消える? 残る? の分岐点
育児や介護などで一度現場を離れ、復職して活躍する保育者はたくさんいます。特に介護については、年代的に、ベテランの先生が直面する出来事。介護のサポートを受けるノウハウはこの10年で積み重なりつつあると思いますが、現実的な負担から、主任や現場リーダークラスの先生が、介護を理由に辞めていくことも少なくありません。
その後、復帰できる状況になったときに、夕方の短時間だけ保育に入るような働き方になり、「そんな時間で使われるような働き方ではこれまでのキャリアが生かされない。一度辞めたことで、キャリアは消えてしまった……」と残念に思ったというベテラン保育者も。しかし、いざ復職してみると、経験が生かされないどころか、現場で頼られまくる存在となり、生き生きとキャリアを再開していました。
若い職員の多い職場では、ウン十年の経験のある保育者は、文字通り頼れる先輩。若い園長の良き相談相手になっているケースもあります。夕方のお迎え時間帯においても、経験豊かな保育者の存在は、保護者からの信頼を得るでしょう。辞めていた期間の人生経験も生きるのが、保育職の特徴ではないでしょうか。
こうした短時間勤務の職員とともに保育をしていくためには、そのほかの職員の負担も考慮することが必須。人を増やすのか、何か業務を減らすのかといった現実問題はありますが、それはまた経営面の話……。一保育者としては、自分のライフステージに応じて、自分の保育者人生を考えること。保育への思いがある限りは、そのキャリアは生かされ、続いていくのだと思います。
お話:大澤洋美
東京成徳短期大学教授
約30年にわたり東京都で保育に従事。幼稚園・こども園の園長を経て現職。『保護者の質問 こたえ方BOOK』『3・4・5歳児の心Q&A』(Gakken)ほか著書多数。
イラスト:北野有