保育者人生の分岐点⑨
【出会う? 出会わない?】
2023.11.02
人それぞれに訪れる、保育者としての人生の分岐点。
そのときどきの迷いに、当事者、同僚、園長、養成校講師……と、いろいろな立場を経験してきた大澤洋美先生が答えます。
出会う? 出会わない? の分岐点
保育者人生においては、「保育を続けるかどうか」以外に、「保育者自身が変わる」分岐点というのもあると思います。
私の場合、その最初の分岐点は、ある先輩保育者との出会いによるものです。その人のもとで保育する中で、「私もこういうふうに考えられるようになりたい」とあこがれ、「私って、こういう保育者になりたいんだな」と、目指す保育者像が定まっていきました。「ただ保育していた私」から、「自分なりの保育観をもった私」に変わったのです。
保育の世界は小さく、その中で、職場の先輩との出会いは、かなり大きなものと言えます。では、園内にそうした出会いがなかったら……? 園の外に出かけてみることを、私は勧めます。
最初の職場で憧れの先輩に出会えた私ですが、やがて、壁にぶつかります。憧れの先輩と私とは違うこと、どうひっくり返ってもその先輩のようにはなれないことに気づいてしまったのです。
このとき、絶望で終わらずに「いろいろな保育がある、いろいろな人がいる、私のような人でもいい」と思えたのは、園の外でいろいろな出会いがあったからです。いまも保育界を牽引される研究者の先生方との出会い。そこに集う保育者たちとの出会い。専門性に惹かれて話を聞くうちに、「保育の世界が広がるおもしろさ」を知り、楽しめる保育者に変わっていけたように思います。
園の中と外、どちらにも出会いはあるものです。両方にあると、保育者人生はよりしなやかな道になるのではないでしょうか。もちろん、家族との時間や趣味の時間を大切にしながら。
次回は、私が園の外で衝撃を受けた出来事についてお話ししたいと思います!。
お話:大澤洋美
東京成徳短期大学教授
約30年にわたり東京都で保育に従事。幼稚園・こども園の園長を経て現職。『保護者の質問 こたえ方BOOK』『3・4・5歳児の心Q&A』(Gakken)ほか著書多数。
イラスト:北野有