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保育者人生の分岐点⑩
【崩れる? 崩れない?】

2023.12.01

人それぞれに訪れる、保育者としての人生の分岐点。
そのときどきの迷いに、当事者、同僚、園長、養成校講師……と、いろいろな立場を経験してきた大澤洋美先生が答えます。

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崩れる、崩れないの分岐点

 前回、園の中と外の両方で、自分を変える出会いを求めてきたことを話しました。
 私の場合、園の中だけでは息苦しさを感じるタイプだったこともあり、外の世界に積極的に出かけていた部分もありますが……。外でいろいろな話を聞くことで、「ああ、私、もっと頑張らなくちゃ」と思ったり、逆に「私、けっこう頑張っているな」と思ったり、客観的に自分を見ることができて、保育を見直す機会になっていたように思います。
 もう20年くらい前になりますが、お世話になっていた大学の先生に誘われて、ハワード・ガードナーさんというアメリカの学者の方の講演「21世紀の教育、創造性と多重知性」を聞きに行ったときのことです。
 その講演は人気が高く、会場には老若男女が集まっていました。そして講演後には、さまざまな人が博士に熱い質問をぶつけていました。教育について、教師や保育者ではない人たちもこんなに興味をもっているのかと驚きました。そして興味が率直に発言できる雰囲気に、何よりも衝撃を受けました。それは、私のいた当時の園の世界では見られない光景でした。私自身、講演会の後に何か疑問が湧いたとしても、「私なんかが質問する場ではない」「こんな簡単なことを聞いてはいけない」と思って黙っている人間でした。
 世界がパッと開けたような気がして、もっと自分の思う通りに発言して生きてみようと思ったことを鮮明に覚えています。外の世界には、こうした思いがけない出会いが多々あり、私の固定概念を崩し、世界を広げてくれたのでした。

お話:大澤洋美

東京成徳短期大学教授

約30年にわたり東京都で保育に従事。幼稚園・こども園の園長を経て現職。『保護者の質問 こたえ方BOOK』『3・4・5歳児の心Q&A』(Gakken)ほか著書多数。

イラスト:北野有

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